第11章 奇行種の初陣
馬を走らせながらクレアは冷静に自身が討伐した巨人のことを思い返した。
不思議と恐怖はなく、「必ず討伐せよ」と脳が発した命令に対して、自分の手足が面白いように自由に動いた。
若干の高揚感さえも感じた。
こんな自分はおかしいのだろうか……
…ぼんやりと考え事をしてしまったが、まだ壁外調査中だ。
壁内に戻るまでは安心できない。
「ハンジさん、このまま全員無事に戻れるでしょうか?」
「んー、どうだろうねぇ……」
ハンジの顔色が渋い。
「あっ!!」
ふとハンジの視線の先を追うと、左翼方向に黒の信煙弾が上がっている。
「黒…!奇行種だ。」
黒の信煙弾が上がったあとすぐに紫の信煙弾も上がった。
「何かあったんですね!?救援むかいますか?」
「いや、あっちまでは距離がありすぎる。ここを離れるのは得策ではない。救援は伝令がきてからにしよう。」
ハンジがそう判断したのとほぼ同時に右翼の前方からも赤の信煙弾が上がった。
「あっ!こっちは赤です!」
時おかずして次は黒の信煙弾が上がる。
「複数体いるのでしょうか?」
「わからないけど、こっちは救援に行ったほうが良さそうだ。2人とも、急ぐよ!!」
「「はい!!」」
救援に向かうと、奇行種1体と通常種4体が陣形に穴をあけていた。
「ハンジ分隊長!すみません……救援お願いします……」
奮闘している兵士の下にはすでに命尽きた兵士の死体が複数体。
死体と判断できるものはまだいい。
そんな判断すらも目を背けたくなる者も散らばっていた。
その惨状に、さすがのクレアも一瞬息をのんだが、動揺している暇はない。
「ハンジさん!奇行種は私に任せて下さい!」
「クレア?!」
こうしてる間にも奇行種は我々を無視して陣形奥深くに向かおうとしている。
「奇行種は奇行種に任せて下さいってことです!」
クレアは鞍の上に立ち上がると奇行種めがけてアンカーを射出し、飛び上がっていった。
腕を振り回し抵抗されたが、うなじが丸見えになった瞬間を見逃さず一気に削ぎ落とす。
見事2体目の討伐成功だ。
クレアはデイジーに跨ると、大急ぎでハンジ達のもとまで戻った。