第76章 慟哭と、その向こう側に見えたモノ
調査兵団の兵服に、眼帯とメガネをかけたハンジ。
それに対して、化粧をして髪を巻き、清楚な黒いワンピースを着ているタリア。
装いは違えど、顔に背丈、体型に至るまで鏡合わせのようにそっくりな2人。
ハンジもタリアも自分とそっくりな人物の登場に驚愕だ。
しかし、タリアにはハンジがここに来た理由がわかっていた。
「あ、あの…あなたは、ハンジさん…ですね?」
「え?どうして私の名前を…?」
戸惑うハンジにクレア。
「あなたの事は、モブリットから聞いていたので…存じておりました。…ねぇママ…中の1部屋、ちょっと借りてもいい?」
「フン、好きにしろ……」
「あの…ハンジさんに、お連れの方、宜しければ中へどうぞ…」
「え…えと……」
目的の人物には会えたが、予想外な事ばかりで言葉がうまく出てこない。
2人は案内されるがままに、隠し扉の中へと入っていった。
建物を真正面から見た時は古びた小さな宿屋のように見えたが、中に入ると奥行きがあり、細い通路の周りは扉だらけだ。
その中の1つを選んでタリアが扉を開くと、部屋の中にハンジとクレアを招き入れた。
「どうぞ……」
「「…………」」
中に入ると天蓋付きの豪華なベッドに大きな鏡、そして部屋の角にはシャワー室やトイレと思われる小部屋。
昼間だというのに部屋は薄暗く、蝋燭のランプが必要だ。
「ハンジさんは、申し訳ないのですが、ベッドにおかけ下さい。」
そう言うと、タリアは部屋の隅に置いてあった折りたたみの小さな椅子を出してきてそこに座った。
「…………」
聞きたい事は山程あったが、ひとまずハンジはクレアの車椅子をベッドの横につけ、すぐ近くに腰をおろした。