第76章 慟哭と、その向こう側に見えたモノ
「そ、そうですね……」
確かに以前リヴァイに連れて行かれた仕立て屋は、入口の扉も大きく、明るい印象の店だった。
それに比べると、どんよりとした雰囲気があり扉をあけるのに躊躇ってしまう。
しかし、店名はあってるのだ。
ひとまずタリアという人物がいるのかどうかだけ尋ねても失礼ではないだろう。
「ハンジさん、タリアさんという方がこのお店にいらっしゃるかどうかだけでも聞いてみませんか?ここに立っていても会えませんし…」
「ん〜、そ、そうだね…とりあえず入ってみるか…」
クレアの言っている事は正しい。
ここに立っていても悪戯に時間が過ぎていくだけだ。
ハンジは思い切って扉を開けてみた。
「いらっしゃい…仕立ての注文かい?……ん?」
扉をあけると、中のカウンターには不機嫌そうな顔で座っている年配の女が1人。
愛想の欠片もない顔で注文を聞いてきたのだが…
「タリアに用事か?」
その女はハンジの顔を見ると、何も聞いていないのに要件をピシャリと言い当ててみせた。
「え…どうしてそれを……」
「当たりだな…まぁ、すぐにわかるさ……タリア!!お客様だ!!」
何故自分達がタリアを尋ねてきたのがわかったのか…
心の中を読まれたような気分になったが、モブリットの遺した地図はやはりここであっていたようだ。
ざわめく胸をおさえながら待っていると、1分もたたないうちに店の奥から足音が聞こえてきた。
「ママー?呼んだかしら?こんな時間にお客様?」
カーテンで隠された隠し扉がカチャリと開くと、中から女が1人出てきてこちらを見る。
「「え………?」」
目が合ったハンジとタリアは同時に固まった。