第76章 慟哭と、その向こう側に見えたモノ
「ハンジさーん!!お待たせしました!!」
「あぁ!!急がないで大丈夫!大丈夫!!」
クレアは玄関で待っているハンジを見つけると、懸命に車椅子をこいだのたが、名前を呼ばれたハンジは、クレアに向かって走り出す。
「ホラホラ、危ないから私が押していくよ!!」
「す、すみません…ではお言葉に甘えて…宜しくお願いします…場所はどの辺りなんですか?」
「んーとね、ここからそんな遠くない所にある仕立て屋みたいなんだ。歩いて行けるは行けるんだけど…この辺って…飲み屋とかが多い場所だと思うんだけど、本当にあってるのかな?」
「飲み屋街…ですか…?でも小さな仕立屋さんなら割とどこにでもありますし…地図通りで大丈夫じゃないですか?」
「そ、そうだね…とりあえず行ってみるか!!」
もし本人がまだ出勤していないなら出直してもいい。
ひとまず2人は地図の通りに歩き始めた、
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「「………………」」
兵舎から歩いて15分程で目的の場所に辿り着いた2人。
しかし、そこには古びた宿屋のような建物に“仕立て屋アイリーン”という看板がある。
昼間だというのに人気がなく、日当たりも悪い場所に建っている。
どう見たって仕立て屋には見えなかった。
「クレア、どうする…?」
「…なんか、怪しいですが…地図では、ここであってるんですよね?」
「う、うん…地図には“仕立て屋アイリーン”って書いてあるから…店名はあってるとは思うけど…でもさぁ、仕立て屋ってもっとこう…なんか明るい雰囲気じゃない?レースをあしらった手作りの看板とか、外からでもマネキンが見えたりとかさぁ…どう見てもここ…闇取り引きとかする店にしか見えないよ…」