第76章 慟哭と、その向こう側に見えたモノ
「クレアー!私はモブリットにもクレアにも甘えてばっかりだ…そんな私は…モブリットに頼ってばかりで…何もしてやれなかった…今頃後悔しても遅いのに…遅いのに…チクショウ……!!うぁぁぁぁぁぁ!」
咽び泣くハンジの右目からはボタボタと涙が溢れて、後ろから抱きしめているクレアの袖にシミを作っていく。
喜怒哀楽の“喜・怒・楽”が大半を占めるハンジ。
こんな風に悲しみに溺れて泣く姿はおろらくだが初めて見ただろう。
ハンジの悲痛の叫びがクレアの胸に深く刺さる。
滝のように流れる涙をすぐに止めてやれる方法が見つからず、クレアはただただ抱きしめる腕に力を込める事しかできなかった。
────────────────
どのくらいの時間がたっただろうか……
叫ぶように泣いていたハンジの声が少しずつ小さくなってきた。
「ごめん…クレア…情けない所見せちゃって…」
「いいえ…そんな事ないです…だって私も…モブリットさんにはお世話になってばかりだったんです…だから…ハンジさんのお気持ちは、痛い程に…理解できます…」
「ん…、ありがとう……」
少しずつ落ち着きを取り戻してきたハンジは、ジャケットの袖で目元を拭き、ポケットからしわくちゃのハンカチを引っ張り出すと思い切り鼻をかんだ。
「泣いて立ち止まっている私なんか…らしくないと思う…」
「ハンジさん…?!」
「モブリットが命に変えて助けてくれたんだ…もう、モブリットの事で泣くのは今ので最後にする…」
そう言ってハンジは鼻水がたっぷりと染み込んだハンカチをクシャクシャと丸めて再びポケットに突っ込んだ。