第76章 慟哭と、その向こう側に見えたモノ
「…これで、終わりですか?」
「あ、あぁ…2枚目は、この小包の受取人がいる場所の地図と名前が書かれている……タリアという人に届けて欲しいそうだ……」
そう言って静かに便箋を畳んで封筒にしまったハンジ。
手紙に書かれていた内容を心の中で何度も反芻すると、今までおさえていたモブリットへの感情が堰を切ったかのように溢れでてくる。
「本当に…本当に…死んでしまったんだな…モブリット…」
「ハンジさん…」
「あぁ!!もうっ!!どこまで…あいつは…どこまでこんなに有能なんだ…!!いつも世話になってたから…最後くらい上官らしく遺品整理をしようと思ったのに…!!こんなんじゃ!何もする事ないじゃないかよ!!」
「ハンジさん…落ち着いてください…!」
「なんだ?!これはアレか?!新手のイジメか?!そうなのかモブリット!!いつも風呂に入らないでクレアに甘えてばかりいるから死んでからギャフンと言わせる算段だったのか?!…うぅ……くそぉ!出てこいよモブリット…私はお前がいたから前だけを向いて頑張れたんだ……最後くらい…最後くらい上官らしい事させてくれたっていいじゃないかぁぁぁぁぁ!!!あぁぁぁぁ!!」
ハンジは涙を流しながら、もうこの世にいないモブリットに向かって想いの丈をぶつける。
ハンジにとってモブリットがどういう存在だったかをずっと側で見てきたクレアには、今ハンジがどんな想いでいるのか手に取るようにわかってしまう。
悲鳴混じりに叫ぶハンジの姿を直視できず、クレアは車椅子から立ち上がると、そのまま背中に抱きついた。
「ハンジさん…お願いです!落ち着いて下さい…!!」