第76章 慟哭と、その向こう側に見えたモノ
敬愛するハンジ分隊長へ
この手紙をあなたが読んでいるという事は、私はもうこの世を去っているのでしょう。
あなたの副官という素晴らしい職を辞する事になってしまった御無礼、どうかお許し下さい。
心よりお詫び致します。
あなたの側で働けた事
あなたの側で学べた事
あなたの副官として側にいられた事
全て私の誇りでございます。
今あなたの側にクレアはおりますでしょうか?
それだけが気がかりです。
クレアがいなくてはあなたをお風呂に入れる事ができません。
クレアがいなくては私の代わりにお説教をする人がいなくなってしまいます。
そして何より、あなたの心が心配です。
あなたは弱音を吐きません。
知らず知らずの内に色んなモノを溜め込んでしまいます。
クレアが側にいなければ、あなたは知らぬ間に溜め込んだモノに押し潰されてしまうのではないかと…私は心配なのです。
あなたの側にクレアがいてくれる事を切に願います。
こんな私ですが、側に置いて下さりありがとうございました。
前だけを見てひたすらに突き進むあなたを心から尊敬しておりました。
今後のご活躍、空の上から見守っております。
モブリット・バーナー
追伸
この手紙と一緒に木箱に入っていた小包を、とある女性に届けていただく事は可能でしょうか?
一方的な想いでしたが、大切にしたいと思っていた女性です。
小包の中には、彼女宛に書いた謝罪の手紙が入っております。
死んだ私の代わりに届けていただけると…助かります。