第76章 慟哭と、その向こう側に見えたモノ
そんな暗黙の習慣を理解していたが1ヶ月もできなかったハンジ。
本当に…“できなかった”のだろう。
ハンジが最後に見たのは、地面に叩きつけられて即死したであろう変わり果てたモブリットの姿。
いくらハンジでも、さすがに1人では無理な話だ。
「ハンジさん、私にお手伝いさせて下さい。私も、モブリットさんには沢山お世話になったので…その…やらせて下さい。」
そう答えると、曇っていたハンジの瞳が少し明るさを取り戻してきたように見えた。
「ありがとうクレア。じゃあ、早速だけど、行こうか…」
「はい!」
ハンジはモブリットの部屋のカギを保管庫から持ってくると、2人で執務室を後にした。
「じゃ、じゃあ…あけるよ?」
ハンジが扉を開けると、目に飛び込んできた部屋の中の状態に、2人とも言葉を失ってしまう。
「え……?!」
「モブリットさん……」
部屋の中は誰かが代わりに遺品整理をしたかのようにキレイに片付いていた。
しかし、モブリットの部屋の片付けは誰にも命じていない。
他の誰かがこっそりやるなんて不可能だ。
「これはいったい…どういう事でしょうか…」
「私にも…わからない……」
クローゼットの中は空っぽで、テーブルの上にも何もない。
しかし、ベッドの上に大き目の木箱が3つ並んで置いてあった。
「何だろ…これは……」
ハンジが左の木箱を覗くと、中にはモブリットの私服と思われる衣類が入っており、1番上に“処分”と書かれたメモが置いてあった。
「……ん?」
ハンジは不思議に思い、真ん中の木箱を覗く。