第76章 慟哭と、その向こう側に見えたモノ
「そんな…ほ、本当に??手伝って…くれるの?」
「はい!!」
「なんでも?!」
「もちろんです!!」
「…………」
実のところ、ハンジはクレアに手伝ってもらいたい事があり体調が戻るのをずっと待っていた。
いつか折を見て頼もうと思っていたが、まさかの本人が快く手伝いを申し出てくれた。
クレアの言う通り、明日からは医務室の仕事が始まるため色々と忙しくなる。
頼むなら、今しかないだろう。
「あ、あのさ…実は、タイミングを見て、クレアにお願いしようと思ってた事があったんだ。」
「そうなんですか?!ちょうどいいです。こんな脚なので…満足にできるかわかりませんが…お手伝いしますよ!!」
すると、ハンジは少し気不味そうに頬をポリポリと掻きながら話し始めた。
「あのさ…モブリットの部屋の遺品整理、まだしてなかったんだ…クレアは何もしなくていい。片付けは私がやるから…その、側にいてくれないかな?」
「モブリットさんの遺品整理…まだされてなかったんですか?」
「う、うん…忙しかったからっていうのは単なる言い訳かな…今すぐ部屋が必要な状態ではなかったのに甘えてやってなかったんだ。1人では、とてもじゃないけど、できそうになくてね…」
「ハンジさん…」
ハンジが手伝って欲しい事は、モブリットの部屋の遺品整理だった。
遺品の整理や部屋の片付けは殆どの場合、帰還後すぐに行われる。
遺族に遺品を引き渡したりするためという理由は勿論だが、全兵士が仲間の“死”を引きずらないために、戦死した兵士の部屋はすぐに片付けるのが暗黙の習慣となっていたのだ。