第76章 慟哭と、その向こう側に見えたモノ
モブリットを失い、エルヴィンを失い、壊滅状態となった調査兵団の団長を任される事になったのだ。
ハンジだって人間。
副官の死を悼む時間だって必要だし、誰かが側で支えてやらなければこんな量の業務など無理な話だ。
「でも、リヴァイから猛反対されちゃってね!!」
「兵長が…ですか?」
「うん…クレアは私の下働きなんかさせなくても、もっと才能を活かせる場所があるだろ…ってね!誠にその通り!!部下の才能を潰すなんて言語道断だ。リヴァイの言葉でやっと変わらなきゃダメなんだって…決心できたよ。だから私も甘えてばかりいないでちゃんとしないと…ね?」
「ハンジさん…」
「ま、まぁ…散らかりまくった部屋はエレン達に手伝ってもらっちゃったけどね!ハハ!ハハハハ…で、どうする?医務室での件、やってみない?」
クレアは医務室の仕事はもちろんだが引き受けたかった。医務室で働く事ができれば直接兵団に貢献できる。
それだけではない。
ゆくゆくは診療所を娘であるクレアに継がせようとしていた両親の想いをも継ぐ事ができてしまうのだ。
だが、クレアはハンジの事も心配だった。
「医務室での件は、謹んでお受けしたいと思います…ですが…1つだけお許しいただきたい事がございます…」
「え…?条件…って事かな?」
「そこまで堅苦しいものではないのですが…」
何か待遇に不満でもあるのだろうかと一瞬身構えたハンジだったが、クレアの口から語られた内容は不満などではなかった。
「医務室でみなさんの身体と健康を守るために全力を尽くしたいと思っています。そして、1日でも早く医師免許を取れるよう勉学にも励みます。ですが…ハンジさんのお身体も心配です。なので、時々はお仕事を手伝わせて下さい…」