第76章 慟哭と、その向こう側に見えたモノ
ーコンコンー
「ハ、ハンジさん…!失礼します!クレア・トートです…!」
すると、中からパタパタと扉に向かってくる足音が聞こえてきた。
「おはよう!待ってたよクレア!さ、入って入って!」
「は、はい!!ありがとうございます…」
扉が開くと、ハンジは笑顔でクレアを迎え入れた。
「……………」
部屋に通されると、クレアはただただシンプルに驚いた。
「ハンジさん…お部屋、キレイにされていますね…」
団長になって1ヶ月が過ぎたというのに、部屋が散らかっていないのだ。
モブリットも自分も側にいなかったのだ。
整理整頓も、片付けも、風呂もずぼらなハンジが、団長になったからといってここまで変わったとは思えない。
これはいったいどういう事だ。
「ハハ…やっぱりソコ気付いちゃう?クレアには敵わないなぁ…」
敵わないなと言いながらカラカラと笑い後頭部を掻いているが、クレアは逆だろうと思わず心の中で突っ込んだ。
「あの…私今までずっとハンジさんの自室と執務室を掃除してきたんですよ。不思議に思わないわけないじゃないですか?」
「だ、だよね…?実は、またリヴァイに怒られちゃってさぁ…“クレアを部屋に呼ぶなら掃除しろクソが!”って言われたんだ。だから昨日エレンとミカサとアルミンにお願いして手伝ってもらったんだよね。」
「そう…だったんですか……」
ハンジの散らかし方は尋常ではない。
1ヶ月分もためていたのなら相当大変だったはずだ。
後で会ったら労いの言葉をかけてやらねばとクレアは呆れたようにため息をついた。