第76章 慟哭と、その向こう側に見えたモノ
「そ、そうなんですか…」
ここ数日、ハンジと顔を合わせてはいたが、だいたいエレンやジャン達が一緒にいたため、今後の事をゆっくり話す事はなかった。
改めて聞きに行くとなるとなんとなく緊張してしまう。
しかし、医師の顔を見るとなんだか妙に笑顔だ。
「先生は、ご存知なんですか?」
「私やリヴァイ兵長は知っているよ。本当はここで教えてあげたいんだけどね。ハンジさんから部屋に来るように伝えて欲しいと言われていたから。さ、行ってきなさい。」
「は、はい…わかりました。」
医師は医務室の扉を開けてやると、クレアは車椅子の車輪を自分でまわしてハンジの部屋へと向かった。
「そういえば…私、ハンジさんの部屋に行くの初めてだわ…」
ハンジは調査兵団第14代目の団長になった。
今まで使っていた旧舎の執務室からエルヴィンが使っていた団長用の執務室へと移ったのだ。
あの旧舎の部屋は、ハンジ専用の研究室として引き続き使うのだろうか。
実験道具に書籍に酒に…そして捨てても捨ててもゼロにならない不思議なゴミくず…
あの膨大な量の物たちをかつてエルヴィンが使っていた執務室に全て移動させるのはどう考えても無理な話だ。
きっとあの部屋は引っ越しをせずに今後も使うのだろう。
そんな事を考えたらあっという間に目的の部屋まで辿り着いてしまった。
「……………」
ハンジとは今までと変わりなく話していたが、いざ団長執務室で話すとなるとやはり緊張してきてしまう。
クレアは胸をドキドキさせながら少し遠慮がちに扉をノックした。