第75章 導きと再会
ポケットに入っていたのは長い髪を結ぶのに使っていた革紐だった。
今後の自分の処遇をまだ聞いていなかったが、兵士として働けないのはもう明白だ。
クレアは長い髪の毛を結っていた紅い革紐を手に取ると、それを使って花束にした。
訓練をしないのであればしばらくは使わないし、問題ないだろう。
うん…なかなかいいではないか…
「……………」
そんなクレアの様子を見て、リヴァイは何も感じなかったわけではない。
あの革紐はずっとクレアが訓練の時に使っていた物だ。
それをエルヴィンの墓に供えるなど、少し妬ける気持ちにもなったが、リヴァイはグッとこらえる。
リヴァイは、最後にエルヴィンが言った言葉をクレアに伝えていなかったのだ。
あれは、エルヴィンが死ぬ間際にリヴァイに対して言った謝罪の言葉だった、別に言う必要はない。
本人からも伝えて欲しいとも言われていない。
だが、エルヴィンがずっとクレアに対して秘めた想いを抱えていたのを知っていたリヴァイ。
今回だけは、目を瞑ろうと思ったようだ。
「それでいいのか?」
「は、はい!大丈夫です!ありがとうございます!」
返事を聞いたリヴァイは車椅子に座らせるため再度クレアを抱き上げた。
1ヶ月寝たきりだったせいか、小さな身体が痩せてさらに小さくなってる気がしたリヴァイ。
もともとクレアを重たいと思った事はないが、痩せてしまった今のクレアは真綿のようにフワフワだ。
このまま風が吹いたら飛んでいってしまいそうだ。
リヴァイはクレアが飛んでいかないように、ギュッと腕に力を入れて抱きしめてから車椅子に座らせた。