第75章 導きと再会
ードタンッ!!!ー
「クレア!?大丈夫か!?」
「うぅ……ず、ずびません……」
顔面から盛大に倒れたクレアは、うめき声を上げながら腕の力を使って上半身を起こそうとした。
「松葉杖も使わずにいきなり立ち上がるやつがいるか…?」
「ごめんなさい兵長…今は薬のおかげで痛みはないのですが…逆に痛みがないと、なんだかまだ脚があるような感覚になってしまって…今一瞬、脚が無いこと忘れてました…すみません…」
そう言ったクレアの目はじんわりと潤んでいる。
悔しくてやるせないのだろう。
今まで兵士としてその身体能力を最大限に活かして思うがままに飛び回っていたのだ。
生まれてからずっと当たり前にあった身体の一部が突然なくなれば、こうもなる。
命が助かったのだから泣き言を言ってはいけないと…クレアは頭では理解していたが、まだ心が追いついていなかった。
「クレアが謝ることは何も無いだろ?ほら、掴まれ…」
リヴァイはポケットからハンカチを出してクレアの顔に付いた土を払うと、抱き上げて花が摘める位置まで運んでやった。
「ありがとうございます…」
目の前で咲き誇っている花の名前はわからない。
でも美しい紫色の花だ。
日当たりがいいせいか、茎も長く葉もとても立派だ。
昨年の秋にハンジに連れて行ってもらった丘に咲いていたのはシオンの花だった。
これはシオンとは花びらの形も枚数も違うが、同じ紫色をしている。
紫色の色霊は…“安らかな魂の浄化を”だ。
雑草かもしれないが、エルヴィンの安らかな眠りを願い供えるにはちょうどいいだろう。
クレアは20本ほど摘んだのだが、このままでは墓に供えてもバラバラになってしまう。
何か束ねる物はないだろうか…
クレアは何か入ってないかとポケットの中などゴソゴソ探すと、偶然にもちょうどいい物を見つけた。