第11章 奇行種の初陣
新兵にとっては初陣となるため、巨人討伐は今回の壁外調査には含まれていない。
索敵陣形をフルに使い、巨人との戦闘を極力避けながら補給拠点を目指し、生きて帰還するのが目的だ。
一見簡単そうな任務だが、補給拠点をまわるだけでも犠牲は避けられない。
「早く開門しないかな〜。早く巨人のみんなに会いたいよ〜。奇行種なんかいたら最高なんだけどな〜。」
開門まではもう間もなくだが既にハンジが焦れている。
「分隊長!今回は討伐が目的ではないのでくれぐれも無茶しないでくださいね!」
兵士たちがピリリとしてる中ハンジはずっとこの調子だ。まるで遠足にでも行くようなテンションでいると、背後から不機嫌な低い声が聞こえてきた。
「うるせぇぞクソメガネ。静かに待てねぇのか。それに奇行種ならここに1体いるだろうが…」
「えぇ?!どこどこ?!」
「ここだ……」
「ひゃっ!!」
リヴァイはクレアの頭に手を乗せグイッと右側のハンジの方に向けると、自身の待機位置まで行ってしまった。
「あははは、リヴァイ!面白いこと言うなぁ!」
「ハンジさーん。もう奇行種でいいので…そんなに笑わないで下さい…」
──カラーーーン、コローーーーン──
開門を知らせる鐘が鳴り、クレアはビクッと背筋をのばした。
「開門30秒前!」
「ひゃっほ〜〜!」
「これより壁外調査を開始する!」
「「「「「ゔぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」
──ガラガラガラガラガラガラ!──
「進めーーー!!」
「デイジー!!行くよ!!」
得意の駈歩発進で速度を上げながら進むと、建物の合間から巨人の姿が見えた。
「クソーーー!!クレア!なんだかあの巨人のお腹の中が非常に気になるけど、ここは援護班に任せて進むよ!!」
「は、はい!!」
クレアは速度を緩めることなく全速力で走った。
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長距離索敵陣形に展開されてから数刻たった。
時折前方で赤の信煙弾があがるが、緑の信煙弾の方向を頼りにハンジ班は順調に進んでいた。
ハンジ達は右翼のやや後方に位置していて、索敵の取りこぼしにぶつかりやすい。