第11章 奇行種の初陣
するとクレアは少しうつむきなごらボソボソと話しだした。
「また兵長と一緒に紅茶を飲みながら仕事がしたいです………」
クレアの頬が赤いのは、リヴァイにつねられていたからなのか、照れからなのか、どちらかはわからない。
だがリヴァイはいまの解答にとりあえず満足したようだった。
「悪くねぇな。了解した。それなら死ぬ気で死なねぇように帰ってこいよ。望み通り、仕事を用意して待っていてやる。」
したり顔のリヴァイの表情に、いったいどれ程の仕事を用意してくれるのだろうかと、冷や汗がでたが、「待っていてやる」の言葉にクレアの胸は熱くなった。
「あ、ありがとうございます。」
苦笑いをしながらクレアは朝食のため執務室を出ていった。
部屋には片付いた書類仕事とキンモクセイの残り香。
リヴァイはふと思う。
クレアのうなじも悪くないが、まとめてしまうとあの長い髪を触ることができない。
クレアはもう出ていってしまったため、おそらく今日は壁外調査が終わり、壁内に帰還するまではまともに顔を見ることもできないだろう。
リヴァイはガラにもなく少しなごりおしくなった。
あの艶のある髪を、指に絡める様に空(くう)に向かって指を動かすと、軽くため息をついてからリヴァイも執務室を後にした。
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トロスト区門前
それぞれの配置についた兵士たちは、エルヴィンの号令と開門を愛馬と共に待っていた。
クレアもその中の1人。
愛馬デイジーが少し落ち着かない様子で首を上下に振っているため、クレアは自身の緊張が伝わらないように、優しく首をなでてやった。
「クレア!いよいよだね!デイジーもしっかり決めこんでて、気合じゅうぶんだね!美人だよ!」
右側にいるハンジがデイジーの編み込みを褒めてやると、デイジーはまんざらでもない様子で一声いなないた。
「はい!初陣なので気合いれてみました。」
「クレア、今回の目的は、ウォールマリア内の拠点2箇所への物資の補充だ。補充完了し次第帰還の予定だから無理はするなよ。」
モブリットはクレアの顔をのぞきこみながら声をかけた。