第11章 奇行種の初陣
「ふふ、わかりました。今度、お風呂にでも誘ってみます。」
「あぁ、そうしてくれ…」
壁外調査当日とは思えない程の穏やかな雰囲気の中、書類仕事はあっという間に終わった。
クレアは紅茶のセットを流しで洗って片付けを済ませたところで振り向くと、目の前にはリヴァイが立っていた。
「兵長?」
「もう……迷いは無さそうだな。」
リヴァイはクレアの片頬に手を添えて問いかける。
「は、はい。兵長の激励のおかげ様にて……もう大丈夫です!まだまだやりたいことが沢山あるので必ず生きて帰ってきます!」
クレアの目に迷いはなかった。
両方の拳をギュッと握る姿を、リヴァイは思わず可愛いと感じてしまう。
「ほう。いいツラになったな。やりたいこととはなんだ。言ってみろ。」
「ハンジさんの研究にとことん付き合いたいです!」
……ったく、1番はクソメガネかよ……
「他には」
「えーと、ハンジさんをお風呂に誘って、石鹸香るピカピカのハンジさんにしてあげたいです!」
……またクソメガネかよ……
「ほう、他には…」
「ハンジさんの……」
「おい待て!」
昨日どん底まで落ち込んでいたお前を引き上げてやったのは、目の前にいるこの俺だ。
それなのになぜ1番最初に俺の名前がでてこねぇんだ。
リヴァイは頬に添えてる手を一度離すと、クレアの両頬をつまみ、不機嫌極まりなく自分の方に引き寄せて問いかけた。
「あのクソメガネ以外にはねぇのか…?」
クレアを見下ろす視線が氷の様に冷たい。
「へ、へいひょう……?」
どうして兵長はいきなり不機嫌になったのか……
言えと言われたことを答えたまでなのに、急に機嫌を損ねてしまった。
もしかして、もしかしなくても、ハンジさんのことばかり答えたのが気に障ったのだろうか……
確かに昨日は兵長の激励で立ち直ることができたのだ。兵長とのことも答えたほうがよかったに違いない。
クレアの方もリヴァイへの素直な気持ちを嘘偽りなく認めたのである。
リヴァイとのやりたい事だって考えなくてもでてくる。
「へいひょうと……いっひょに…」
「おい、何言ってるかわからねぇよ。」
リヴァイはつねり上げてた手を開放した。