第75章 導きと再会
それに、これまで以上に妊娠にも気をつけなくてはならない。
今の医学に完璧な避妊法は存在しない。
そのためにできる事は1つだけ。
強く子を望む男女は、女の排卵周期に合わせて積極的に子作りをする。
つまり、子を望まぬ場合はその方法と反対の事をして確率を下げるのだ。
今まであまり意識した事はなかったが、今後はその辺りも気を付けないと、また同じ悲劇を招いてしまう。
そうなるとおそらく、目の前にいるこの小さな命と意識を交わす事ができるのは…本当に今回が最後だ。
だからクレアは最後に、沢山の感謝の気持ちを伝えたかった。
「ねぇ…抱きしめても…いい?」
「え…?!」
「私はあなたに何もしてあげる事ができなかった。でも私はあなたによって2度も助けられた。こんな事しかできないけど…あなたをこの腕で、抱きしめたいの…」
「お母様……」
そう言ってクレアが両腕を広げて前に出すと、光の集合体は一際美しく輝きその胸に飛び込んできた。
「ありがとう…本当に…ありがとう!!」
実態のない光だが、クレアはその腕に抱きしめ心からの礼を伝えた。
どうか…どうか幸せになって欲しい。
自分では叶えてやる事ができなかったが、その誕生を望み、愛してくれる夫婦のもとに宿って、幸せな人生を送って欲しい。
自分を母と呼んでくれてありがとう…
子を愛しむという気持ちを教えてくれてありがとう…
さようなら…
そう心の中で呟くと、クレアはそっと目を閉じる。
現実の世界に戻るために。
リヴァイとハンジにこれ以上心配をかけるわけにはいかない。
クレアは1分でも1秒でも早く目覚める事を願いながら、身体に戻れるよう強く念じた。