第11章 奇行種の初陣
頭に浮かんだのはクレアの上官、ハンジのことだ。
ハンジの髪も長い部類に入るが、なにせいつもボサボサで結んでるのかからまってるだけなのかわからない髪型をしている。
風呂には入らない、執務室はクレアが片付けても片付けてもすぐに散らかす。
書類仕事はほぼモブリットに丸投げ。
研究熱心なのは良いことだか、普通にしてるつもりでも品の良さが出てしまうようなクレアが、なぜずぼらなハンジに愛想を尽かすことなく側にいるのかが、リヴァイはいまだに理解できていなかった。
モブリットにしたって同じことだが……
しかも、これだけハンジを崇拝していながらも、自身の清潔基準はきちんとしており、風呂や掃除などはハンジの不潔基準に毒されることなく今に至っている。
そこの基準だけは絶対崩してくれるなよとリヴァイはただただ願うばかりだ。
「簡単にできるのならあのクソメガネにも教えてやれ。あのボサボサの髪をボリボリかきながら話しかけられると、虫でも飛んできそうで胸糞悪い……」
「え?ハンジさんにですか?んー、私が教えてもやろうとするでしょうか?ハンジさん、研究や巨人のことには熱心で1日もかかさないのに、ご自身のこととなると何一つやろうとしないんですよね……兵長もご存知だとは思うのですが……」
「あぁ…クソみてぇにご存知だ…」
「フフフ、兵長とハンジさんって本当に仲がいいんですね。」
「おい、お前何か勘違いしてねぇか?」
「そんなことないですよ。兵長はきれい好きだし、ハンジさんはちょっとずぼらですけど、正反対の性格だからこそ、合うものもあるんです。」
「…………………。」
ちょっとどころではない、と思わずつっこみたくなったが、そこはおさえてクレアの話に耳を傾けた。
「凹と凸や、磁石の極は反する者同士がピタリと合いますよね。……お二人は、そんな風にみえます。何も語られなくても、この調査兵団で命を懸け合ってきたのだなとすぐに分かるくらいに。」
そこまで言われてしまうと何も反論することができない。
実際にハンジとは命を懸け合ってきた。
本当にうまい例え方をしやがる。
「まぁ、あいつのことは長い付き合いでよく理解してる部分もある。命を懸け合ってきたのも事実だが、磁石のようにくっついていたくはねぇな……」