第74章 選択と衝突と決断
再度意識を失ったエルヴィンの呼吸が下顎呼吸に変わる。
もう、間もなく心臓が、全身の生命の活動が…止まってしまう。
リヴァイの頭は混乱していた。
目をあけて自分の名を呼んだという事は、その目はしっかりと自分の姿をとらえて見えていたという事だ。
当然注射器だって見えていたはずだ。
なのに何故エルヴィンは“地下室に行きたい”と言わなかったのだ。
自分が“死んでくれ”と背中を押すまで地下室に行きたいとゴネていたエルヴィンが何故…
どうして今さらわかりきった事で懺悔をするんだ。
リヴァイはエルヴィンの言った事が全く理解できなかったが、ふとある事を思い出した。
“何度も死にたいと思った”
あの時の会話で何気なく言ったエルヴィンの言葉。
真実を知りたいと奮闘しながらも、心のどこかでは何度も死んだ方が楽だと思っていたのだろう。
「……………」
エルヴィンはやっと死ねると思ったのだろうか…
だから注射器の針を刺した時に抵抗したのだろうか…
下顎呼吸を繰り返しているエルヴィン。
それは、静かに“死”が訪れるのを待っているようにも見えた。
「…………クソッ!!!」
やり切れない想いに盛大な舌打ちをすると、リヴァイは覚悟を決めて巨人化する注射液を投与した。
ーバキバキバキッ!!!ー
「…………!?」
太い木が折れるような音で目を覚ましたのは四肢を切断されたベルトルト。
「……??え??」
目に飛び込んできたのは大口をあけて自身を鷲掴みにした無垢の巨人。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」