第74章 選択と衝突と決断
ーバッ!!!ー
しかし、薬液を入れようとした瞬間、エルヴィンはおもいきり腕を上げてしまった。
「…………!?」
針は折れなかったが、まだこんなに力が残っているのか?
「…いったいどうしたんだよ…」
眉間にシワを寄せてもう1度腕を取ろうとすると、弱い呼吸を繰り返しながらエルヴィンは薄っすらと目をあけた。
「リ…リヴァイ……か?」
「エルヴィン…?!気が…付いたのか?」
こんなケガをして息があるだけでも奇跡なのだ。
その上意識を取り戻すなんて…
きっと、生きて地下室を見に行きたいというエルヴィンの執念なのだろう。
リヴァイはそう思ったのだが…
「リヴァイ……?」
「今助けるから黙ってろ…もう喋らなくていい……」
「……クレアは、無事か…?」
エルヴィンが口にした言葉がリヴァイの想像していたモノと大きく異なり、思わず注射器を持っていた手を止めてしまった。
「あ…?…クレアは片足を失ったがまだ生きてる…だが、早く治療をしねぇと危ない。とっとと地下室行ってトロスト区に帰還するぞ。」
「そうか…無事…なんだな……リヴァイ…ひとつだけ…最後に……謝りたい事が…ある…」
「…………?!」
謝る…?最後に…?いったいどういう意味だ。
「俺は……クレアの事が…好き…だった…何度か欲望に負けて…触れてしまった事がある……頭の中で…汚してしまった事も…ある……すまなかっ…た……」
ここまで言うと、再び目を閉じてしまったエルヴィン。
「なんだよ……最後って…いったいどういう意味だよ……」