第74章 選択と衝突と決断
「私は条件が揃ったとは思わない…」
「ゲホッ…ゴホッ……」
ライナーは咳き込みながら血を吐くが、ハンジはめり込ませた刃から力を抜かずに続ける。
「今はリヴァイやあちらの状況がわからない。それを確認する時間も余裕も無いと思うね。なぜなら、こいつらの底力は我々には到底計り知れないからだ…首を刎ねてもまだ安心できないよ!」
「ガッ…!!ガハッ…!!」
「ハンジさんらしく…ないですね。わからないものにはわからないと蓋をして、この先どうやったら俺達は巨人に勝てるんですか?」
「……………」
ハンジは首を切り落とすつもりで力をこめたが、ジャンの“ハンジさんらしくないですね”という言葉を聞くと、それ以上力を込める事ができなかった。
「俺達が敵を計り知れるようになるのは…いつですか?」
「……………」
私らしくない…か。
新兵のくせに言ってくれるじゃないか。
でも…間違ってはいない…かな…
そうだよね、いつもの私なら…
探究心と好奇心の塊みたいな私なら、こんな焦るようなやり方はしなかったと思う。
モブリットを失ったからだろうか…
それともクレアが危ない状態だからだろうか…
何にせよ、自分がこんな安直な行動をとっているうちは、敵を計り知る事なんてできないのは確かだ。
ハンジはジャンの言葉で数秒間黙ると、静かに振り向いた。
「ミカサ…」
「はい?」
「ガスはあとどれくらいある?」
「もう殆ど残っていません…ですが、エレンとアルミンの元への片道分はあります。」
「エレンとアルミンは…無事なの…?」