第11章 奇行種の初陣
「………」
リヴァイはまばたきするのも忘れて自問自答をする。
…なぜこいつがいるんだ…
まぁ…来るなとは言わなかったんだ、来ていても不思議ではないが…それにしたって、昨日のことなどなかったかの様にあっけらかんとにこにこしてやがる。
女心など考えたこともなかったが、昨夜にあんなことがあれば、普通は少し恥じらう姿をするものではないのか?
ここまでいつも通りの調子だと自分は男として意識されてないように感じるが……いや、そんなことはないだろう。以前に触れた時はそれなりに男を意識した態度をみせていたはずだ…わからねぇ。こいつの考えてることがまったくわからねぇ……
「…兵長?」
するとクレアは目をパチクリとさせリヴァイを覗き込んできた。
「…壁外調査当日までここにくるとはたいしたもんだ。さすがハンジ班の奇行種は肝のすわり方が違うな。」
いじわるな言い方などするつもりはなかった。
しかし、クレアへの気持ちを自覚してから改めて見ると、容姿や仕草がより一層可愛く見えてしまい、照れ隠しのいじわるがでてしまう。
「確かに…昨日弱音を吐いていたヤツがあっけらかんと、おかしいですよね…でもいつもの時間に目が覚めてしまって。ですが、ここ1週間執務のお手伝いで掃除をしてなかったので、調度よかったです!キレイになりましたよ。」
「掃除をしてたのか…確かに最近は激務だったからな。助かった。」
クレアはいつもの様子を崩さず答えたが、本音はちょっとがっかりしていた。
また「奇行種」と呼んでくるということは、昨日のあの行動に、特に意味などなかったのであろうか。
抱きしめられて自分の名前を呼ばれた時の胸の高鳴りは今でもはっきり覚えている。
昨夜あんなにも優しかったリヴァイが、今は良くも悪くもいつものリヴァイだ。
自分が特別な存在になったのか少し期待してしまったが違うのだろうか。
クレアはリヴァイのことがよくわからなくなったが、そんなこと今考えても仕方がない。
「掃除も終わったところなので、紅茶淹れましょうか?」
「いいのか?頼む。少し仕事もあるから、お前の分も淹れろよ……」
「は、はい。ありがとうございます!」
自分の分も淹れるように言われたのが嬉しく、クレアは少しはりきって紅茶の準備を始めた。