第11章 奇行種の初陣
──翌朝──
クレアはいつもの時間に目が覚めた。
ベッドの上の段ではまだフレイアが寝息をたてて眠っている。
いつものように静かに着替えると、クレアは鏡にむかって髪を梳かす。
器用に髪を分けて編み込みをすると、毛先まで編まれた髪をくるくるとまとめ団子状にくくった。
母親の形見のこの長い髪も、壁外では命取りになってしまう。巨人に掴まれでもしたら一瞬で終わりだ。
立体機動で飛んでもほどけない様にきっちりとまとめてピンで止める。
髪をまとめ、準備が整ったクレアの目に、もう迷いはなかった。
リヴァイの言葉を信じ、自分を信じて、必ずこの場所に戻る。
遺書も書かなかった。
身辺整理もしなかった。
それでいい。
自分は今日またここに帰ってくるのだから。
鏡にうつった自分の姿を見てうなずくと、クレアはリヴァイの執務室にむかった。
──カチャ──
いつもの時間にきたが、リヴァイはまだ来ていなかった。
そういえば、ここ1週間は執務の手伝いで掃除をしていない。
さすがに1週間しないでいると、ところどころに埃が溜まっているのが気になる。
クレアでも気になるのである。
潔癖症のリヴァイは相当気になっているに違いない。
クレアは大急ぎで掃除を始めた。
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リヴァイもいつもの時間に目が覚めていた。
壁外調査当日ともなれば、やることはそこまでない。いつもよりゆっくり身支度を整えてから自室をでた。
執務室までの長い廊下を歩きながらリヴァイは考える。
気まずくはならなかったものの昨日あんなにも大胆なことをしてしまったのだ。
きっと今朝はクレアは来ていないだろう。
リヴァイは執務室のカギを取り出し解錠する。
──カチャリ──
──ドンッ──
カギを開けたはずの扉があかない。
「あ?!どうなってやがる。」
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だいたい終わらせたところで扉があく音がしたと思ったが、なかなか開かない。
不思議に思い、クレアが扉に手をかけると、カギがかかっている。
「兵長?扉はあいてますよ?おはようございます!」
そこに立っていたリヴァイは何故か呆れた顔をしていた。