第72章 “その時”がきたから…Side シェリル
涙で潤んだ目で真っ直ぐと私を見つめるエルヴィン。
何だか胸の奥がカァッと熱くなった。
もう少し……
もう少しだけこのまま見つめ合っていたいと思ってしまったけれど、獣の巨人の投石も迫ってきている。
タイムリミットね。
新兵達の気持ちが変わらないうちに急いで作戦を決行しなければ……
「ヒィーーーンッ!!!」
私はエルヴィンを激励するようにひと声いなないて立ち上がると、頸を上下に振って早く乗るように急かした。
早く乗りなさい!!!
あなたが先陣きって走らなきゃ誰もついてこないわよ!!!
「…そうだなシェリル。さぁ、行こう…」
エルヴィンは私の背に乗ると、新兵の前まで行き叫んだ。
「突撃を開始する!!続けぇぇ!!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「これこそ唯一!!この残酷な世界に抗う術だ!!兵士よ怒れ!!兵士よ叫べ!!兵士よ…!!戦えぇぇ!!!」
エルヴィンの号令で皆、信煙弾を打つと、叫び声を上げながら一斉に走り出す。
私も負けじと叫びながら走ったわ。
私は調査兵団第13代団長エルヴィン・スミスの愛馬、月毛のシェリル!!
獣の巨人!!リヴァイ兵長があんたに近づくまでの間、時間を稼がせてもらうわよ!!!
そして私は走った。
走って…走って…走り抜けた。
エルヴィンと新兵の叫び声を聞きながら私も叫んだ。
あと一歩でも、あと一秒でも長くエルヴィンを乗せて走る!!
この脚が折れても…
この目が潰れても…
エルヴィンに捧げたこの心臓が止まるまで走り続けてみせる!!