第71章 ウォール・マリア奪還作戦
「なんだと……?」
返ってきた言葉が予想と反していて思わず呆気に取られてしまう。
「…策が…あるのか?」
「…あぁ…」
策があるとは言ったが何故エルヴィンはこんな力の無い目をしているんだ。
リヴァイの頭は疑問符だらけだ。
「……なぜそれをすぐに言わない?…なぜクソみてぇなツラして黙っている?」
「……この作戦が上手くいけば…お前は獣を仕留める事ができるかもしれない。ここにいる新兵と、私の命を捧げればな…」
エルヴィンは遠くを見つめながら淡々と続ける。
「…お前のいうとおりだ。どの道我々は殆ど死ぬだろう…イヤ…全滅する可能性の方がずっと高い。それならば玉砕覚悟で勝機に懸ける戦法もやむ無しなのだが…そのためにはあの若者達に死んでくれと…一流の詐欺師の様に体のいい方便を並べなくてはならない。私が先頭を走らなければ誰も続く者はいないだろう。そして私は真っ先に死ぬ。地下室に何があるのか…知ることもなくな…」
「は…?」
エルヴィンの言っている事を理解するのにほんの少し時間が必要だったリヴァイ。
このままでは調査兵は全滅。
最後の手段はあるが、それはエルヴィンの命と引き換え。
もう両極端な選択肢しか残されていない。
エルヴィンは、パニックを起こしている新兵を見てため息をつくと、崩れ落ちる様に木箱に腰をおろす。
「ハァ……俺は……このまま、地下室に行きたい……俺が今までやってこれたのも…いつかこんな日が来ると思ってたからだ…いつか…“答え合わせ”ができるはずだと…何度も…死んだ方が楽だと思ったさ……」
「エルヴィン…?!」
「それでも…父との夢が頭にチラつくんだ。そして今、手を伸ばせば届く所に答えがある……すぐそこに…あるんだ…」