第71章 ウォール・マリア奪還作戦
「………!!!」
ベルトルトが巨人化する瞬間、このままでは全員死ぬと確信した。
モブリットは、何が大事で、何が大事ではないか、そんな“選択”をしようとか、するつもりはまったくなかった。
しかし、このまま3人とも死ぬわけにはいかない。
次期団長と任命されているハンジに、類稀なる才能を持ったクレアを絶対に失ってはならない。
気が付けば身体が勝手に動いていた。
タリアの顔が浮かばなかったわけではない。
秋に満開になる向日葵畑を忘れたわけではない。
だが、モブリットの身体は兵士として、ハンジへの忠誠心を軸に動いた。
「タリア…約束を守れず…すまなかった…」
ハンジが枯井戸に、クレアが枯井戸の影に落下するのを確認すると、モブリットはタリアへの謝罪の言葉を風へと乗せる。
ベルトルトの起こした爆発の中で、モブリットは捧げた心臓を勇敢に散らすと、その人生に幕を下ろした。
最期まで敬愛を貫いたハンジを…
ハンジ班の奇行種クレアを…
そして、愛しき想い人タリアを残して…
モブリットはこの世を去った。
────────────────
その頃、ウォール・マリア側の兵士達は馬を守りながら2〜3m級の巨人の掃討に苦戦していた。
「しかし、どうやって“獣の巨人”を仕留めればいい?奴はあそこに鎮座したまま動きそうにないぞ…」
「リヴァイ、お前は休んでろ!!」
「とりあえず小せぇのを全部片付ける!!行くぞ!!」
リヴァイが無垢の巨人の相手をしていたらいつまでたっても“獣の巨人”を倒す事はできない。
ディルク、マレーネ、クラース班はリヴァイを一旦後退させると馬を守るために前へと出ていった。
「クソッ…さっきの爆発…あいつらはどうなってる…」