第71章 ウォール・マリア奪還作戦
ここからはお互い別行動になる。
壁を挟んでそれぞれの戦いに全ての力を注がなくてはならないからだ。
顔を見れるのもこれが最後かもしれない。
ライナーとの対決に闘志を滾らせていたクレアだったが、リヴァイの事を忘れたわけではない。
ここで別行動となると、どうしても胸がざわつくのを止められなかった。
「………」
だがクレアは込み上げてくる涙をすんでのところで止めると、グッと唇の両端に力を入れて笑顔で敬礼をしてみせた。
もし自分がここで死ぬのなら、リヴァイの記憶に残る最後の顔はどうか笑顔であって欲しい。
そんな願いから、クレアは懸命に笑顔を作りリヴァイを見つめた。
リヴァイはそんなクレアの顔を見て何も感じなかったわけではない。
クレアがここで笑った意味にも察しがついていた。
リヴァイは真顔で小さく頷くと、何も言葉をかけることなく馬のいるウォール・マリア側へとおりていった。
言いたい事も、やりたい事も、全てはこの作戦を生きて完了させてからだ。
ここで最後にしてなるものかと、リヴァイも心の中で闘志を滾らせると、苦戦している兵士達のもとへ飛んで行った。
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シガンシナ区側へとおりていったハンジ班と104期組は、アルミンの発案のもと、壁を登っていたライナーをおびき出す事に成功していた。
ライナーにはエレンの対人格闘と雷槍での攻撃にかかっている。
だが、ベルトルトの居場所がまだつかめていない。
前回の対決では、エレンはライナーをあと一歩のところまで追い詰めたが、壁上からベルトルトの奇襲を受けたため連れ去られてしまった。
そのため、周囲の状況がよく確認でき且、十分な立体物がある場所まで誘導しなければならない。