第10章 奇行種に完敗
──Sideクレア──
まさかリヴァイからキンモクセイの話を聞かれるとは思ってはいなかった。
特に話したくない内容ではなかったが、少し現実離れしているような、理解しがたい内容だと自覚があったため、トンチンカンなやつだと思われないか、クレアは少々心配になった。
しかし、特に厳しいつっこみが入らないところを見ると、なんとなくは理解してもらえたのだろう…
また2人の間には静かな空気が流れ始めた。
リヴァイが登場してくれたことにより、少し表情が穏やかになったクレアだったが、再び静寂の中で星空を見上げると、またなんとも表現しがたい無力感がこみ上げてきた。
「兵長…私は生きて帰ってこれるでしょうか…」
リヴァイを困らせるつもりはこれっぽちもなかったが、つい不安がこぼれてしまう。
死というものが他人事ではなくなっている今、不安や未練の数々を口に出さずにはいられなくなってしまった…
自身のこと、ハンジのこと、フレイアのこと……
次々と想いが込み上げてきてしまう。
少し戸惑っているリヴァイの雰囲気も感じていたがクレアは止まらなかった。
ついにはリヴァイに対しての素直な気持ちをもぶつけてしまっていた。
「こんな私は……駄目な兵士でしょうか……」
気づけばボロボロと涙がこぼれてしまう。
自分がこんなに弱い人間だとは思わなかった…
兵長はこんな私に幻滅するだろうか……
情けないやつだと叱責するだろうか……
でも今はこのやり場のない気持ちを吐き出すことしかできなかった。
しかし、リヴァイは切なく眉間にシワをよせると、突然力強くクレアを抱きしめた。
強く強く押し付けるように抱きしめると、クレアの背中は軽くしなり、顔は空を仰いでしまう。
視界が一瞬にしてリヴァイの顔から満天の星に変わったクレアはただただ驚くばかりだ。
心臓がドキドキと一気に加速していく。