第10章 奇行種に完敗
調査兵同士の恋愛に幸福はないから?
ファーランやイザベルの時のような後悔を二度としないように?
ふざけるな……
今まで俺はいったい何を迷っていたんだ…
あれだけの明確な独占欲を認めておきながら、なぜ目をそらしていたんだ。
誰にも触れさせたくない…
他の男の名など聞きたくない…
失いたくない…
側にいてほしい…
もうじゅうぶんじゃねぇかよバカヤロウ…
そこから先は考えるよりも先に身体が動いた。
自分の正直な気持ちを表すかの様に…
────ギュッ────
リヴァイはクレアを力の限り抱きしめた。
クレアの身体は思っていたよりも細く華奢だった。
「……!兵長?!」
「クレア………」
「!?」
「大丈夫だ……。お前のことは、俺が見込んで調査兵団への入団を許可したんだ。お前は死なねぇ…自分と…俺を信じろ…」
「へ…兵長……うっ…うっ…」
「必ず生きて戻ってこい!」
「……はいっ………」
リヴァイはクレアの首元に唇をつけて更にきつく抱きしめ直すとキンモクセイの香りで胸をいっぱいにしながらため息をついた。
もう完敗だ……
認めてやるよ…俺はクレアが好きだ…
キンモクセイの香りとクレアの涙は、かたくなだったリヴァイの気持ちを打ち砕くのにはじゅうぶんな破壊力であった。
イザベルと、ファーランのときのような後悔は二度としない。
調査兵同士の恋愛に幸福があろうとなかろうともうそんなのは関係ない。
もう、どうしようもなくクレアが欲しい…
自分の気持ちを受け入れてしまうと不思議なもので、今まであんなに切なく急かされていた気持がスッとどこかへ消えてなくなっていた。
かわりに現れたのは溢れるほどの愛しい気持ちと心地良く感じるキンモクセイの香り。
リヴァイはやっと気が付いた。
キンモクセイの香りには、自分の気持ちに正直になれと、ずっと背中を押されていたことに……