第70章 前夜・交わる想い
この細い首も腕も腰も脚も…
そして小さな手も、しっとりと弾力のある滑らかな白い肌も…
最後になど絶対にしたくない。
クレアのこの香りに何度も理性を破壊された。
クレアの笑顔に何度も愛しさを感じた。
クレアの型にはまらない予想外の奇行に何度も度肝を抜かされた。
クレアが小さい身体で凛々しく戦う姿に何度も鼓舞された。
そして、他の誰よりも大切で…1番愛おしい…
今の自分は全てがクレアを中心に動いている。
もう、クレアと出会う前の自分がどんな人間であったかなど忘れてしまえる程に。
それはそれで悪くない。
クレアしか見えてない自分は、意外にも嫌いではなかった。
だが、それだからこそ怖いのだ。
クレアを失ってしまった時の事を考えるのが…
一緒に死んでしまえるのならばある意味それはそれでいいのかもしれない。
しかし、今の自分を築き上げている全てを失ってしまったら、自分はいったいどうなるのだろうか…
酒に溺れるだろうか…
仕事をしなくなるだろうか…
娼館へいって八つ当たりの様にクレア以外の女を手当たり次第抱くのだろうか…
「………………」
きっと全部だろう。
クレアを初めて抱いた時にキンモクセイの香りに誓った事に嘘はない。
だがあの時とは違い、人が巨人化し、人が人を殺し合う世の中になってしまった。
無垢の巨人と戦い、ウォール・マリア奪還ルートを開拓していただけのあの頃とは大きく状況が変わってしまったのだ。