第70章 前夜・交わる想い
解錠し、そっと扉を開けると、リヴァイはクレアに背中を向ける様な姿勢で眠っていた。
「…………」
クレアは後ろ手で慎重にカギをかける。
しかし、ある問題が浮上した。
誰にも見つからずにリヴァイの部屋まで来るという所まではよかったのだが、この後はいったいどうしたらいいのだ…
そこまでちゃんと考えてこなかったクレアはその場で右往左往してしまう。
このまま側までいって肩を揺すって起こすのか?
いや、それは無理だ。
せっかく疲れて眠っている所を起こすなんてできるわけがない…
しかし、“じゃあ何のためにここまできたのだ”ともう1人の自分が突っ込みをいれる。
それもその通りだ。
そもそもこのカギはこういう時のために渡してくれた物なのだ。
ちゃんと理由を話せば、リヴァイも怒らず聞いてくれるだろう。
意を決してリヴァイに近づくと、薄いタオルケットをかけた背中が規則的に動いている。
眠っているところ申し訳ないと思いながらもそっとクレアはリヴァイの肩に手を伸ばした。
のだが、リヴァイの肩に触れるまであともう少し…その時だった。
ーバサッ!!!ー
「誰だ!!!?」
「キャアアア!!」
人の気配で目が覚めたリヴァイは素早く身体を起こすと、ベッドのサイドテーブルの引き出し入っているナイフを取り出しクレアの前に突き出した。
「あ、あ…あ…あの…す、す、すみません……!!」
「…はぁ?…クレアか!?」
持ち前の運動神経でナイフの刃をすんでの所で避けたクレア。
避けたはいいが、リヴァイの鋭い殺気に声が裏返り、自然と息が上がってしまった。