第70章 前夜・交わる想い
鎧の巨人には刃はまったく使い物にならない。
そのため雷槍の訓練はこれでもかという程した。
身体の小さな自分には雷槍が大きすぎてコントロールが難しかったため、他の兵士の何倍も練習をし、筋トレで力もつけた。
だが、自分は皆の足を引っ張らずに急所へ雷槍を撃ち込む事ができるだろうか。
自分のせいでとどめを刺すことができなければ他の兵士の命を奪う事になってしまう。
そう考えだしたらどんどんと不安が込み上げてきてしまった。
また超大型巨人はスピードはないが、なんと言ってもあの破壊力だ。
巨人化するだけで、辺り一面を吹き飛ばしてしまう。
それにあの熱風。
重症こそまぬがれたが、あの熱風にやられて負った火傷の痛みは今でも覚えている。
自分は調査兵団に入団してから、危険な目には遭ったものの、死なずにここまでやってこれた。
彼らとの戦闘を想定して厳しい訓練を積んできた。
でも、自分が生きて帰れる保証のない壁外での作戦。
事に今回は壁外調査ではなく、知性を持った巨人との戦闘を想定した作戦なのだ。
「…………」
不安な気持ちに支配されてしまったクレアは、この静寂の中で、言いようのない孤独感に襲われた。
暗闇にたった1人……
胸が締めつけられるように痛い。
そんな痛みに自然と涙までこぼれてきてしまった。
「リヴァイ…へいちょう……」
そして、痛む胸を押さえながら出てきた名は、誰よりも愛しい、リヴァイの名。
別れ際にされたハグと頬へのキス。
その場所が疼くように熱い。
耐えきれず横向きにゴロリと転がると、カチャリという金属音が耳に飛び込んできた。