第70章 前夜・交わる想い
「…………」
しかし、クレアは1時間たっても、2時間たっても、中々眠りにつく事ができなかった。
少し疲れの様な怠さはあるが、まったく眠りにつけそうな感覚がない。
こんなのは、初めてだ。
入団して初めての壁外調査の前夜だって、割とすぐに眠れたのにと、クレアはため息をつく。
「暑くて眠れないのかしら…?」
少し蒸し暑くて部屋の窓を開けると、外から涼し気な風が入ってヒンヤリとクレアの頬をかすめた。
これで眠れるだろう。
再びクレアはベッドに入るとゴロリと横になり目を閉じた。
「……………」
さらに1時間はたっただろうか。
クレアはまだ眠りにつく事ができないでいた。
時計を見れば深夜の0時を回ろうとしている。
「いったいどうしちゃったのかしら…」
仰向けになり右手を額に置いた。
別に熱があるわけでも、どこか具合が悪いわけでもない。
明日の夜は新月のため、今夜も月明かりの殆ど見られない漆黒の夜空だ。
月明かりが眩しいわけでもない。
「……………」
ボーッと2段ベッドの天井を見つめる。
眠れないからか、アレコレと余計な事を考え出してしまう。
明日の日没と同時に出立して、新月の闇夜の中シガンシナ区まで進み、到着次第エレンが硬質化を使って穴を塞ぐのだ。
作戦自体はシンプルだ。
だが、必ず邪魔が待ち受けてるだろう。
ライナーと、ベルトルトとの戦闘は避けられない。
さらには正体不明の獣の巨人という存在も無視できない。
眠れないクレアは、ライナーとベルトルトとの戦闘を思い出してしまっていた。