第70章 前夜・交わる想い
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「完全にお開きみたいね…はい、サシャ。」
「あ、ありがとうございます…」
ちょうど食べ終わったタイミングもあってか次々と食堂を出ていく兵士達。
皿に肉も残っていないだろうし、サシャを解き放しても大丈夫だろう。
クレアはサシャの縄をほどいてやった。
するとクレアは、次々と食堂を後にする兵士達と逆走する様に自分が座っていた席まで戻り、残っていたにんじんのグラッセを皿ごと手に取ると小走りで厩舎に向かった。
「冷めちゃってるのにまだいい香り。きっとデイジー喜ぶわ…」
そう、クレアはデイジーに好物のにんじんを食べさせるために、厩舎まできていたのだ。
デイジーも兵士達と同様、明日の日没から朝方にかけて夜通し歩くのだ。
少しでも英気を養って欲しくてこっこりと持ってきたのだが…
「……あら…?」
厩舎に誰かいるようだ。
こんな時間にいったい誰だろうか?
クレアは不思議に思いながら厩舎の中に入ると、そこにいたのはダスゲニーに何かを食べさせているリヴァイだった。
「あ…兵長……?」
「クレアか…?」
「兵長も、ダスゲニーに美味しい物食べさせてあげてたんですか?」
「まぁ、美味い物といっても、角砂糖だがな…そういうお前は何を持ってきたんだ?」
「夕飯に出ていたにんじんのグラッセです。バターの香りに甘く味付けもしてあるので…デイジーが喜ぶかと思って。」
クレアは皿の上のにんじんを1つダスゲニーに食べさせると、残りは全部デイジーの口元に持っていってやった。