第70章 前夜・交わる想い
「…………ん?」
それはどんどんエスカレートしていき、お互い胸ぐらを掴んでは怒鳴り声を上げている。
「………あっ!!」
そしてついに殴り合いが始まってしまった。
「これ以上死に急いだらぶっ殺すぞ!!」
「お前こそ、母ちゃん大事にしろよ!!」
「それは忘れろぉぉ!!」
お互い何か叫びながら殴り合ってるが、その内容がよくわからずクレアの頭は疑問符だらけだ。
「ね、ねぇ?止めなくていいの?」
「あれ…?いつもはミカサが止めに入ってるのですが…」
いつもミカサが止めに入っているとサシャは言っているが、当のミカサは2人の殴り合いを見ながらなんだか微笑んでいる。
隣にいるアルミンも同じ顔。
止めるつもりはなさそうだ。
そして周りにいる兵士達も、呆れた顔をしているだけで、止めようとしない。
「いくらなんでも止めないとマズいわよね…?」
「え?やらせとけばいいんですよ〜?」
「で、でも…」
サシャも周りの兵士達同様呆れ顔だ。
でもいくらなんでもケガをしてしまったら大変だ。
クレアは立ち上がって止めに入ろうとしたのだが…
ードガッ!!!ー
ードォンッ!!!ー
エレンとジャンの殴り合いは、不機嫌メーターがマックスになった人類最強の兵士長によって強制終了となった。
「…お前ら全員はしゃぎすぎだ。もう寝ろ……あと掃除しろ……」
鋭い睨みをきかせながらそう言い残すと、不機嫌オーラを纏いながらリヴァイは食堂から出て行ってしまった。
一瞬でお開きモードとなった食堂内。
リヴァイに腹部を殴られ蹴り飛ばされた2人の唸り声が、シンと静まり返った食堂に後味悪く響いた。