第70章 前夜・交わる想い
自分1人だけ残っても、他の全員が生きて帰ってこれなければ、ハンジやリヴァイといった幹部を失った調査兵団は、長期に渡り組織として機能しなくなってしまう。
事実上、長期間活動停止となるだろう。
そうなれば、再度ウォール・マリア奪還作戦が実行できのは何年も気の遠くなるような先の話になってしまう。
その前に、壁の外の“脅威”が攻め込んできても勿論アウトだ。
このまま片腕を失くした団長として老いさらばえていくくらいなら、この作戦に全てを懸けて、地下室の中に眠ってる“答え”を見てから死にたい。
「ハハッ……」
どうやら今の自分は、幼き頃から抱いた野望を優先しているのだろう。
人類の勝利よりも、“自分”が地下室に眠る秘密を見に行く事の方が大事らしい。
わかってはいたが、改めて自分の腹黒い部分を再確認すると、自然と笑いが込み上げてきてしまった。
「用を足すことも満足にできなくなるのは勘弁だな…確かにお前の言う通り…手負いの兵士は現場を退く頃なのかもしれない……でもな、この世の真実が明らかになる瞬間には、私が立ち会わなければならない。」
真っ直ぐと言い切ったエルヴィンに、リヴァイの眉間のシワはさらに深くなる。
「それが…そんなに大事か?てめぇの脚より?」
「あぁ…」
「人類の勝利より?」
「そうだ」
調査兵団はまだエルヴィンを失うわけにはいかない。
どんな形であれ…
例え…自分が死んだとしても、エルヴィンはまだこの壁内に必要な人物なのだ。
そんな想いを胸に、リヴァイなりの言葉で凄んでみせたが、エルヴィンは頑なに首を縦に振ろうとはしなかった。
人類の勝利よりも大事な“この世の真実”。
そこまで迷いなく言われてしまったリヴァイは、もう折れるしかなかった。