第70章 前夜・交わる想い
リヴァイの言いたい事も、その気持ちも理解できる。
でも…
それではダメなのだ。
「ダメだ…エサで構わない。囮に使え。指揮権の序列もこれまで通り、私がダメならハンジ。ハンジがダメなら次だ。確かに困難な作戦になると予想されるが人類にとって最も重要な作戦になる。そのために手は尽くしてある。全ては私の発案だ。私がやらなければ成功率が下がる。」
「そうだ、作戦は失敗するかもしれねぇ…その上お前がくたばったら後がねぇ。お前はイスに座って頭を動かすだけで十分だ。巨人にとっちゃそれが1番迷惑な話で、人類にとっちゃそれが1番いい選択のハズだ…」
「いいや違う…1番は作戦に全てを懸けることに…」
「オイオイオイオイ待て待て!これ以上俺に建て前を使うならお前の両脚の骨を折る…ちゃんと後で繋がりやすいようにしてみせる。だがウォール・ーマリア奪還作戦は確実にお留守番しねぇとな…しばらくは便所に行くのも苦労するぜ?」
エルヴィンが本当に人類と兵団のためを想うのであれば、リヴァイの言う通り“お留守番”をするべきなのかもしれない。
だが、エルヴィンの中には調査兵団の団長という立場の自分と、この壁と巨人の秘密を暴き、幼き頃聞いた父の仮説を証明したいと野望を抱いた自分が存在する。
どちらもエルヴィンである事にかわりはない。
団長という立場の自分でこの作戦に挑むなら、ここで“お留守番”が正解だ。
だが、もし作戦が失敗に終わったら?
ウォール・マリア奪還作戦に行った兵士が1人も帰ってこなかったら…?
リヴァイやエレンすらも戻ってこなかったら?
“次”エレンの生家の地下室に辿り着けるのはいったいいつになる?