第70章 前夜・交わる想い
「そうか……エルヴィン…お前の判断を信じよう。」
リヴァイはポツリとそう呟くと、エルヴィンの執務室から出ていった。
────────────────
この日の夜はウォール・マリア奪還作戦の前祝いという事で夕飯に肉が振る舞われた。
ヒストリアの即位によって、正当な税収を得る事ができた調査兵団だが、ここまで豪華な肉料理が出るほど資金繰りに余裕はなかった。
しかし、命を懸けた…そう、歴史に残るような大きな作戦の前なのだ。
兵士の指揮を上げるためにも、特別な資金が食費にあてがわれた様だ。
そんな肉料理を前に若い兵士達は大興奮だ。
その中でも一際目立ったのがサシャの座っていたテーブル。
乾杯の音頭もそこそこに、肉の奪い合いが始まったが、サシャは肉を塊ごと抱えて齧りつくという暴挙に出た。
完全に目が据わっていて、意識があるのか無いのか不明だ。
「やめてくれよサシャ!俺!お前を殺したくねぇんだ!!」
コニーが泣きながらサシャを締め上げるが、なかなか動きが止まらない。
終いには肉を取り上げたジャンの手に噛み付く始末だ。
結局暴挙に出たサシャは、エレンとコニーによって食堂の隅の柱に縛り付けられるという結果になってしまった。
「ハンジさん…サシャ、縛られちゃいましたね…」
「ん?アハハハ!本当だ!縛られてる!暴れてたもんね〜」
離れたテーブルにいたクレアやハンジにも、サシャの暴挙は丸見えだった。
縛り付けられた所で意識を取り戻したようだったが、また肉を独り占めされたらたまったものではないと、エレンやジャン達は唸るサシャをサラッとスルーだ。
いつもペアのようにつるんでいたコニーでさえサシャを助けに行く事はしなかった。