第70章 前夜・交わる想い
「本日で全ての準備は整った。ウォール・マリア奪還作戦は、明日の日没直前。そして決行は2日後の早朝だ。地下室には何があるのか?知りたければ見に行けばいい。…それが調査兵団だろ?」
エルヴィンの力強い眼差しに、皆も応えるように頷くと、それぞれ立ち上がり執務室を出ていった。
「では各班任せたぞ。」
ーバタンー
全員出て行ったと思われた扉。
しかし、そこにはまだ1人、執務室から出ずに残っている人物がいた。
「なんだ?リヴァイ…」
扉に背中をつけて立っていたのは、リヴァイだった。
「気の早い話だが…ウォール・マリアを奪還した後はどうする?何より防衛策の確立が先だと思うが…その後は…」
「脅威の排除だ。壁の外にはどうしても我々を巨人に食わせたいと思ってる奴がいるらしいからな。もっとも…それがなんなのかは、地下室に答えがあると踏んでいる。だからさっき言った通りだ。地下室に行った後に考えよう。」
「…………」
そう、これはさっきも言った。
しかし、リヴァイはあまり納得したような表情をしていない。
いったいなんだと言うのだ。
「…はっきり言うが、お前がそこまで生きてるかわからねぇから聞いてるんだ?その身体はもう以前の様に動かせねぇ…さしずめ巨人の格好のエサだ。」
そういう事か…
エルヴィンは失った右腕の袖をギュッと握ると、そのまま続きに耳を傾ける。
「現場の指揮はハンジに託せ。お荷物抱えんのはまっぴらだ。お前はここで果報を待て。連中には俺がそうゴネたと説明する…イヤ、実際そうするつもりだ。それでいいな?」