第69章 仲間
なんだか傍から見れば、小動物に餌付けしている光景に見えなくもない。
「ありがとうございます…でも、こんなに食べたら太っちゃいますよ?」
「ん?クレアはそんな事気にしなくても大丈夫だ。どんどん食べなさい。」
「そ、そうでしょうか…訓練も休んでずっとベッドの上なので…太ってしまったら復帰後の訓練に支障がでそうです。」
そう言いながらも誘惑に負け2つ目の焼き菓子を手に取って頬張るクレアを見て、エルヴィンは思わず笑みをこぼしてしまった。
「団長…?」
口元に拳を当ててクスクスと笑っているエルヴィン。
笑っている理由がわからずクレアの頭の中は疑問符だらけだ。
「いや、なんでもないよ。クレアもそうだが、女性は少し太る事を気にしすぎだ。男からしてみたら、そん事は大した問題ではないのだがね…」
「そうなんですか…?まぁ…それなりに身長がある人や、胸もお尻も大きなセクシーな女の人なら多少は気にしなくてもよさそうですが…私みたいな胸も出てない上にチビなヤツが、余計な所だけ肥えたら…その…悲惨なだけかと…」
自分の低身長と貧乳を気にしてか、少し俯きながら喋るが、その手にはしっかりと3個目の焼き菓子が握られている。
言っている事とやっている事が激しく矛盾しているこの光景。
そしてその事にまったく気付いてないクレア。
エルヴィンは吹き出すのを堪えるので精一杯だ。
「先生の話だと、復帰のめどもたっていると聞いたよ?期間限定の休息なんだ。だからそんな事は気にせず、美味しいと思った物は好きなだけ食べなさい。」
エルヴィンは皿の上からまた別の味の焼き菓子を選んで取ると、クレアの前に差し出した。