第69章 仲間
焼き菓子1つで迷っている自分を可愛いなどと言ってしまえる程エルヴィンはストレートだ。
リヴァイもストレートといえばストレートなのだが、なにせ、直球すぎる。
エルヴィンがリヴァイと大きく異なる点はこの“紳士的”な所だろうか。
いつも爽やかな笑顔を崩さず、調査兵団の団長として兵士達をいつも激励している。
真面目で頭が良くて、紳士で爽やかで…
こんなエルヴィンなら側にいて支えたいと立候補する女は掃いて捨てる程いそうだが、クレアはエルヴィンが特定の女を側に置かない理由を知っている。
昨年の秋のとある夜に、クレアはその理由を聞いていたのだ。
クレアは討伐能力に長けた兵士。
だが、そんなクレアだって心が壊れそうになってしまう時が何度もあった。
それを救ってくれたのは紛れもなく恋人であるリヴァイだ。
エルヴィンは調査兵団の最高責任者だ。
1人では辛いと思う時くらい、過去に何度もあったはずだ。
それでも自身の野望のために独り身でいる事を貫いているエルヴィンにクレアの胸はチクリと痛んだ。
「どうした?」
「あ、いえ…なんでも…」
突然真顔になってしまったクレアを心配して声をかけたエルヴィンだったが、ハッと我に返ったクレアはすぐに笑顔に戻り1番上の焼き菓子を手に取り口に入れた。
「お、美味しいです。しっとりふわふわで、甘くて…これは紅茶味でしょうか?本当に…美味しいです。」
笑顔に戻ったクレアに安堵すると、エルヴィンはまだまだ食べるようにと勧める。
「それは良かった。ほら、まだあるから食べなさい。」