第69章 仲間
「……?」
ゆっくり開いた扉から姿を現したのはエルヴィンだった。
「だ、団長!?」
「ノック無しに扉をあけてすまなかった。左手が塞がっていたのでこのまま失礼させてもらったよ。」
左手が塞がっている?
確かにエルヴィンは前屈みになった不自然な姿勢で医務室に入ってきた。
きっと右肩を使ってドアを押したのだろう。
「だ、大丈夫ですか?!」
「あぁ大丈夫だ。クレアはそのままベッドにいなさい。」
慌てたクレアはベッドからおりようとしたのだが、それはエルヴィンによって止められてしまった。
「クレアが退屈しているんじゃないかと思ってね。こんな物を持ってきたんだ。」
「あ!それは…」
エルヴィンの左手が持っていたもの。
それは丸いトレーに乗った2人分のティーセットと山の様に積まれた焼き菓子だった。
「先生やハンジからはだいぶ回復してきていると聞いていた。クレアの事だから訓練に出たくて退屈してるんじゃないかと思ってね?ご一緒しても差し支えないかな?」
「も、勿論です!!どうぞ、こちらにかけて下さい。」
「ありがとう。」
クレアはベッドの下から丸イスをだすと、本を閉じて枕の横に置いた。
イスに座ったエルヴィンはサイドテーブルにトレーを置くと片手で器用に2人分の紅茶を入れてクレアに差し出す。
「あ、ありがとうございます…」
「そういえば…先生は留守にしてるのかい?」
エルヴィンは自分で淹れた紅茶を一口啜ると、医師がいない事に気づいたようだ。