第68章 出会いと別れ
「うっ……うぇ……うぅ……」
どれくらいたっただろうか。
まだしゃくりあげながら泣いているクレアの頭を撫でながら、リヴァイはそっと声をかけた。
「俺はともかくお前の子だ。きっと聡明で利発な子だったに違いない…だから、この大事な時期に宿ってはいけないと判断して、自ら天(そら)に帰ると、決断したんだろう…」
「…兵長?どうして…それを……」
「ん?なんの根拠もない、俺がただそう思っただけだ…」
「あ、いえ…違うんです…実は、ただの夢かもしれないのですが、私、気を失ってる時にお腹の赤ちゃんに会っていたと思うんです…」
「…?!」
「どんよりとした空間を彷徨っていたらキラキラした光の集合体がやってきて、私を母と呼んだので…間違いないかと…人間の形はしてなかったので、勿論顔などはわかりませんでしたが…」
「お前の事を“母”と呼んだその光と、何か話したのか?」
「たくさんの事は話せませんでした…でも、“天に戻らなくてはならなくなった”、“忘れ物をした”と…それに…“自分を責めないで”とも…あれ…なんだか、どれもこれも私の都合のいい解釈みたいですね…自分を肯定させるためだけの妄想なのかもしれませんが…そんな夢を見ていました。」
「……、俺は妄想だとは思わない。きっとそれは本物の記憶だと…思う。」
「兵長……」
「今回の事にはきっと意味があったんだ。夢の中にまで出てきてお前に伝えたんだ。お前に似て賢い子だったに違いない。1番辛い想いをしたのはクレアだ。だから俺が口を出すのは間違ってるのかもしれないが…この出会いも別れも…俺達の間にできた子が決めた尊い決断で、意味のあるものだったんだ。だから、一緒に前を向くべきじゃないか…」
そう言うと、リヴァイはクレアの両頬を包んで上を向かせた。