第68章 出会いと別れ
「……………」
リヴァイは今回の事について、2人で話をする時間が必要だと思い、医師に席を外してもらったのだが、いざ2人きりになると何から話をすればいいのかわからず言葉がでてこなかった。
子供の事を話すのか…
いいや…
クレアの身体を気遣うのが先だろ…
それとも、黙って抱きしめればいいのか?
恋人である自分の発する第一声でクレアの心が救われるのか、壊れるのかが決まる。
こんなショッキングな体験、もちろん初めてだが、リヴァイはそう思い込んでいたため、中々声をかけてやる事ができなかった。
クレアは変わらずベッドの上で身体を起こしたまま壁を見つめている。
抜け殻の様になってしまったクレアになんて声をかければいいのか…
考えあぐねていたら、クレアの方からこの沈黙を破った。
「兵長…申し訳ございませんでした…」
「クレア…?!クレアは、謝る様な事は何もしていないだろ…だから、謝る必要はない…」
「いいえ…私は最低な人間です。せっかく授かった命なのに…大好きな兵長との間にできた尊い命だというのに……少しホッとしている自分がいるんです…」
「…!?」
「授かった命を守りきれなくて悔しいと思う気持ちも勿論あります。でも、先生から10日程で訓練に復帰できると聞いて、どこかで安心している自分もいるんです…授かった命にも気付きもせず、兵士としての生活を優先させていた自分は最低な人間です。兵長…こんな私で…私が…こんなで人間で…本当にごめんなさい……」
壁を見つめたままポツリポツリと話すクレア。
その蒼い瞳からは涙があふれ、毛布を握っているクレアの手の甲にポタポタと大粒のしずくが落ちていく。