第68章 出会いと別れ
「気を失う前に、私が妊娠と流産の可能性があると言ったのは…覚えているかな?」
「はい…覚えております。」
「そうかい…婦人科の専門医の診断は…自然流産だった。子宮の中にあったものはほぼ排出して、感染症の確率も低いと言っていた。完全に出血が止まって、クレア君の体調が戻れば、10日程で訓練復帰してもよいそうだ。」
「そうですか……」
「出血が止まって体調が安定するまではここで絶対安静だよ。さ、薬を飲んで。」
「はい…わかりました…」
医師の話に淡々と返事をして黙って出された薬を飲むクレア。
蒼い瞳は光を失い、壁を見つめている。
色んな事が一気に起こったのだ。
無理もない。
医師は痛々しいクレアの姿に、かけてやる言葉が見つからなかった。
すると、話が済んだ2人の様子を見て、リヴァイが医師にある事を申し出た。
「先生、話はもう終わりか?」
「はい…痛みがないのであれば、服薬もしましたし、後は安静にしていてもらえれば…」
「そうか…了解した。そしたらすまないが、クレアと2人にしてもらう事はできるか?」
子供を心待ちにしている男女も勿論だが…兵士として厳しい毎日を過ごしてきた2人にだって、今回の事はあまりにも衝撃的な出来事だったはず。
ゆっくり話をする時間も必要だ。
「大丈夫です。では、私は奥の仮眠室で書類仕事をしておりますので、何かあれば呼んで下さい。」
「助かる……」
医師は丸イスから立ち上がって頭を下げると、クレアのカルテを持って奥の仮眠室へと入っていった。