第68章 出会いと別れ
『痛くて苦しい思いをさせてごめんね…また、お母さんのお腹に戻ってこれたら…その時はパパと一緒に喜んでくれると、嬉しいな…?』
「そんな…謝らなきゃいけないのは…私なのに…ま、待って……」
思わず腕を伸ばすが、その腕が何かを掴む事はなく、クレアは真っ白な光に包まれ強制的に現実の世界へと引き戻された。
────────────────
「…………ん。」
医務室独特の消毒液の匂いに鼻を刺激されたクレアは、ゆっくりと目を開いた。
酷く身体が重怠いが、気を失う前の様な強烈な腹痛や吐き気は嘘のようになくなったいた。
2、3度まばたきをすると、飛び込んできたのは、心配そうに顔を覗き込むリヴァイとハンジの姿。
「クレア…!!」
「クレア?目が覚めたんだね!!せんせー!!早く来て!クレアが目を覚ました!!」
「本当かい?!」
ハンジが大声で呼ぶと、医師も慌ててやって来る。
「わ、私!エルヴィンに知らせてくるね!!」
「あぁ、頼んだぞハンジ…」
ハンジが慌ただしく医務室を出て行くと、医師はクレアのカルテと服薬させる薬を持ってベッドサイドの丸椅子に腰掛けた。
「クレア君…3時間程気を失っていたんだ。腹部の痛みや吐き気はどうかな?」
クレアは身体を起こしてみるが、それでも痛みはなかったため、そのまま答える。
「身体は怠いですが…痛みや吐き気はもうありません…」
「それは良かった。それで…往診に来てもらった婦人科医の診断なんだが…」
医師は少し言いにくそうだったが、クレアはこの先に語られる真実を知っていたため、不思議なくらい落ち着いていた。