第68章 出会いと別れ
「なんだろう…」
その光はクレアに向かって一直線に向かってくると、クルクルとじゃれる様にクレアの身体の周りを回りだした。
その不思議な光は小さな星屑が何千、何万も集まった集合体の様で、キラキラ光りながらクレアの側を離れない。
「……なんだか、温かい……」
その光が温かくクレアを包むと、少しずつ腹部の痛みが和らいできた。
「…………」
すると、今度はどこからか声が聞こえてくる。
『お母さん…』
『ママ…』
『お母ちゃん…』
『お母様…』
幼い子供の声の様だが男か女かは声だけではわからない。いったいどこから聞こえてきてるのだろうか。
そんな事を考えていたら、まるで心の中を読まれたかのように返事が返ってくる。
『ここだよ!!』
「え?!この声は…あ、あなた…なの?」
なんとその声の主は、クレアの身体をクルクルと回る光の集合体だった。
『そうだよ…ママ…』
「……!?」
ママ…?!
この光は自分の事を“ママ”と呼んだ。
まさか……もしかして……
ここでやっとクレアは気付く。
この声の主は自分の胎内に宿った小さな命だという事に。
「あなた…、もしかして…私のお腹にいた赤ちゃんなの…?!」
『うん、やっと気づいてくれたね。』
クレアと意思の疎通がとれたその光は、嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねるように回りだす。
「…………」
だが、クレアはこの状況を冷静に分析すると、嬉しそうに跳ねる光とは真逆に、その顔を曇らせた。