第68章 出会いと別れ
リヴァイの言葉に、連れてこられた婦人科医は、医務室の医師に軽く挨拶をすると、直ぐに準備にとりかかった。
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医師がトレーにのっている血の塊を見せると、やはりそれは子宮から流れ出た胎嚢だった。
出血の具合や内診の結果、ほぼ自然流産で間違いないだろうという診断で、クレアは出血が完全に止まり体力が回復するまでは医務室で絶対安静。
そして感染症を起こさなければ概ね10日程で訓練に復帰できるだろうとの事だった。
婦人科医がクレアに服薬させる薬を処方すると、自身の診療所まで戻るため、調査兵団が用意した馬車に乗って兵舎を後にした。
クレアの着替えを済ませて隣の真っ白な布団が敷かれたベッドに寝かせると、少しずつ呼吸が安定してきたため、医師もリヴァイもハンジもひとまず安堵の表情になる。
リヴァイとハンジは床に落ちて割れたグラスを片付け、血だらけになった布団の洗濯を手伝い、太陽の光がよく当たる場所に干すと、昼食を食べるのも忘れて黙ってクレアの側で目覚めるのを待った。
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「………あれ…」
クレアは痛みや苦しみで混沌としている、現実と夢の世界の狭間でボンヤリと目を開いた。
周りを見ると赤や黒、灰色などが渦巻くように混じり合い、モヤモヤと変な空間だ。
クレアの身体はそんな中でプカリと浮いてる様な感覚だった。
「……ワタシ、死ぬの…かな…」
身体をフワフワさせながら、そんな事を考える。
うまく思考が働かず、死が怖いのか怖くないのか自身でもよくわからない。
これからどうなるのだろう…
そんな事を考えていたら遠目からキラキラと一筋の光が見えてきた。