第68章 出会いと別れ
「クレア…」
「ハンジ分隊長。出血はもうほとんどありませんし、身体を拭いて隣のベッドに移してあげましょう。」
「あぁ…わかった。」
見れば、クレアの顔は乱れた髪が汗で濡れ、頬にべっとりと張り付き、上半身は汗で下着が透けてしまう程、びっしょりとシャツが濡れていた。
そして下半身は血でベトベトだ。
このままでは目覚めが悪いだろう。
クレアの流産にまだ頭がついてこなかったハンジだが、このままにしておくわけにはいかない。
2、3回首を振って自身を叱咤すると、ハンジはクレアのシャツを脱がそうとボタンに手をかけたのだが…
ーバタンッ!ー
「おい!クレアは無事か?!」
ちょうどリヴァイが婦人科の医師を連れて戻ってきた。
「リヴァイ…」
「リヴァイ兵長…」
どんよりとした重い空気。
やけに静かな医務室。
ベッドを見れば、布団の下半分は真っ赤に染まり、その上で横たわっているクレアは顔を真っ青にして目を閉じていた。
ピクリとも動かない。
「…どういう状況だこれは……」
リヴァイが血相を変えてクレアの元までかけ寄ると、その頬を両手で包んだが、目は固く閉じたままだ。
「リヴァイ兵長…クレア君は気を失っているだけです。呼吸も脈も正常なので、まずは大丈夫かと…」
「…………」
クレアは生きている。
医師の言葉で少し冷静さを取り戻したリヴァイは、早速クレアの治療にとりかかるように願い出た。
「そうか…だったら早くクレアを診てやってくれ!!」